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XOR問題とは — 単純パーセプトロンの限界

XOR(排他的論理和)は「2 つの入力のどちらか一方だけが 1 のとき 1」を返す関数。正解の点が対角に並ぶため、1 本の直線では分けられない(線形分離不可能)。入力空間に直線を 1 本引くことしかできない単層のパーセプトロンは、これを学習できない。1969 年にミンスキーとパパートが著書『Perceptrons』でこの限界を数学的に示し、ニューラルネット研究(結合主義)は長い停滞に入った。

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くわしく — 巻末解説より

パーセプトロンの数学

Cornell の教室で Rosenblatt が黒板に描いた単層パーセプトロン (Scene 2 第 5 ページ — Tech Nugget)
Cornell の教室で Rosenblatt が黒板に描いた単層パーセプトロン (Scene 2 第 5 ページ — Tech Nugget)
体験する重みと閾値を手で決める

直感的に

入力に重みを掛けて足し、閾値を超えたら 1 を出す。これが計算点 1 個の全部だ。

入力 x₁ 入力 x₂ 入力 x₃ w₁ w₂ w₃ Σ 合計 閾値判定 0 / 1 合計 = w₁x₁ + w₂x₂ + w₃x₃ 合計 ≧ θ → 1 / 合計 < θ → 0
各入力に重みを掛けて合計し、閾値で 0/1 を出力する。これが単層パーセプトロン。

重みは「その入力をどれだけ重く見るか」を表す。重みが大きい入力ほど合計への効き方が強く、 負の重みなら逆向きに効く。合計が閾値を超えるかどうかだけで、出力は 0 か 1 に決まる。

数学的に

y = f( Σ wᵢxᵢ + b )
f(z) = 1 (z ≧ 0) / 0 (z < 0)
b = −θ(バイアス項)
重み付き和を活性化関数 f に通して出力。閾値 θ はバイアス b として吸収できる。

この f はステップ関数(活性化関数の最初の形)。 後の章で、これが sigmoid → ReLU と進化していく。

図解:AND と OR を解くパーセプトロン

AND ゲート(w₁=w₂=1, θ=1.5)
x₁x₂合計≧1.5出力
000No0
011No0
101No0
112Yes1
OR ゲート(w₁=w₂=1, θ=0.5)
x₁x₂合計≧0.5出力
000No0
011Yes1
101Yes1
112Yes1
AND も OR も、重みと閾値を選べば 1 本の直線(しきい値)で正しく分類できる。

ここで重要なのは、パーセプトロンが幾何学的に何をしているかだ:

x₁ x₂ 0 1 0 1×××x₁+x₂=1.5
AND は (1,1) だけが出力 1。1 本の直線 x₁+x₂=1.5 で ● と × を分離できる。

パーセプトロンとは、入力空間に直線(超平面)を引いて、 2つのクラスに分ける装置だ。

学習アルゴリズム

しかも、重みを自動で調整できる:

  1. ランダムな重みで始める
  2. 学習データを 1 つ入力する
  3. 出力が正解と違ったら、重みを少し修正する
    wᵢ ← wᵢ + η · (正解 − 出力) · xᵢ
  4. 全データで正解するまで繰り返す
パーセプトロンの学習則。間違えるたびに重みを少しずつ正解方向へ修正する。

η(イータ)は学習率。後の章で SGD, Adam として再登場する概念。

これが人類初の「機械学習アルゴリズム」だった。

突破... そして絶望

1969 『Perceptrons』 出版、結合主義の冬。1988 改訂版前書きで Minsky の悔い (Scene 2 第 8 ページ)
1969 『Perceptrons』 出版、結合主義の冬。1988 改訂版前書きで Minsky の悔い (Scene 2 第 8 ページ)

パーセプトロンの成果: - AND, OR, NOT を学習できた - 簡単なパターン認識(文字、図形)に成功 - 人間がルールを書かなくても、データから学ぶ ことを証明した

ここまでは素晴らしい。しかし1969年、事態は一変する。

マービン・ミンスキーとシーモア・パパートが 著書 "Perceptrons" で数学的に証明してしまった:

「パーセプトロンは XOR(排他的論理和)を解けない。」

XOR(どちらか一方だけ 1 のとき 1)
x₁x₂XOR
000
011
101
110
x₁ x₂ 0 1 0 1××
XOR は ● と × が斜め対角に並ぶ。1 本の直線では決して分離できない(線形分離不能)。

パーセプトロンは「直線で分けられる問題」しか解けない。 これを線形分離可能性という。

現実の問題の大半は線形分離不可能だ。 画像認識も、音声認識も、自然言語処理も。

ミンスキーの本の衝撃は絶大だった。 研究資金は凍結され、研究者はニューラルネットから離れていった。 第1次AI冬の始まりだ。

理解度チェック
Q1
パーセプトロンが行っている幾何学的操作は何ですか?
  • a入力データを回転させる
  • b入力空間に直線(超平面)を引いて2クラスに分離する
  • cデータを圧縮する
  • dランダムに分類する
答えを見る
正解 — b
パーセプトロンは入力空間に超平面(2次元なら直線)を引き、 データを2つのクラスに線形分離する装置。
Q2接続問題
Scene 1 で学んだ「記号主義 vs 結合主義」の対立において、 パーセプトロンの挫折はどちらの陣営に打撃を与えましたか?
  • a記号主義
  • b結合主義
  • c両方
  • dどちらでもない
答えを見る
正解 — b
パーセプトロンは結合主義のフラッグシップだった。 その限界の証明は、結合主義全体への不信感に繋がり、AI冬を引き起こした。
Q3
XOR 問題を解くには、パーセプトロンに何が必要だと思いますか?(推測でOK)
  • aもっと多くの学習データ
  • bもっと速い計算機
  • c直線を2本以上引ける仕組み(=層を重ねる)
  • d別の活性化関数
答えを見る
正解 — c
直線1本(単層)では XOR を解けないが、 直線を2本引ければ(= 2層にすれば)解ける。これが多層パーセプトロンであり、 後のニューラルネットワークに繋がる。Scene 5 で詳しく学ぶ。
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